PrinceU
□寒空、夜空
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今年もあっという間に12月。師走という忙しい時期だけども、中学生の私にとっては忙しいなんて感覚はない。どっちかって言うと、12月はクリスマスに冬休みなど楽しいことが多いというイメージが強い。
今夜は外を歩くと指先が固く冷えきり、吐く息が真っ白になるような寒さ。こんな日は暖かい部屋でベッドの上に寝転び、雑誌を読むに限ると思う。
適当にパラパラと捲り、ふと目についたページ。
『恋人特集ねー…』
そこは彼氏にされた嬉しい事や嫌なことなど、読者が投稿していくページ。嬉しい事には惚気に近くて羨ましい出来事が多々書いてあった。
『寒い中、夜遅くに家の前まで来てくれた、ね』
私の他に誰もいない部屋にふーん、とだけ響く。興味ない感じだけど実際は羨ましい。だって私の彼氏であるリョーマはそんなことをしそうなタイプではないから。
他の投稿も一通り読んで、やっぱりリョーマはこういうことしないな、とクスっと笑みがこぼれた。
そして人間っていうのは単純なもの。その中では私はかなり単純な方だと思う。
『リョーマに会いたくなってきた…』
とは言ってみるものの、この寒空の中にリョーマの家まで行く勇気はない。だからせめて声だけども…と思ったその時、電話を示す携帯の着信音が鳴り響いた。
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