PrinceU
□普通じゃつまらない
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「…苦い」
リョーマに言われなくてもわかってる。だってそのつもりで作ったんだもん。
バレンタインの日リョーマが家に遊びにきた、というか呼んだって言ったほうが正しいかも。
『バレンタインのチョコあげたいから家に来て!』
それだけ言って切ったから返事を聞いてない。その時携帯を見つめながら、しかめっ面のリョーマが目に浮ぶ。でもやっぱり来てくれるんだよね。
部屋にあがってもらって渡したのはバレンタインのチョコ。作っているときから知ってるの、苦いってことを。
そのチョコを口に運んだ瞬間、彼の眉がピクリと動いた。そして苦い、と一言。
『知ってる?チョコは甘くてほろ苦くなきゃいけないんだよ』
「甘さがないんだけど」
うん、思っていた通りの反応。だてにリョーマの彼女やってない。
…さあ、あれを出さなきゃ。
『これが甘さなの』
コトンと彼の前にあるテーブルにマシュマロが浮かべてあるマグカップを置く。これもバレンタインチョコ。
「ココア?」
『違うよ、ホットチョコレート』
彼はよく理解出来ていないまま、ホットチョコレートを一口。自分で言うのもあれなんだけど美味しそう。
「…うまい」
リョーマの猫目が見開かれた。こいつ、ちょっと疑ってたなって思ったけど誉めてもらったから何も言わないでおこう。
「これが甘さってわけね」
『どう?今年はちょっと違うバレンタイン!』
「…いいんじゃん?来年も名無しさんからの楽しみにしてるから」
さらっと口説き文句。そんなこと言われなくたって来年も再来年もずっとあげるつもりだけどね。
さあ、来年は何にしようかな。
普通じゃつまらない
(ホワイトデー忘れないでね!)
(当たり前じゃん(…忘れてた))
-END-
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