PrinceU
□お菓子の匂い
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「名無しさん先輩!大変っす!」
昼休み、私がいる図書室に似合わない赤也が飛び込んできた。それも場違いな大きな声をだして慌てていた。
『図書室は静かにお願いしまーす』
「そんなこと言ってる場合じゃないんすよ!とりあえず来て下さい!」
私は赤也に無理矢理腕を引っ張られて図書室を出て行く。
あーあ、今いいところだったのに。あ、本を戻してないから後で来ないと。
赤也に引っ張られたまま、着いた場所は彼氏であるブン太の教室の前。それなのに赤也は教室に入ろうとはしない。そのかわり、仁王が教室から出て来た。
「おっ、名無しさん来たか。大変じゃ。ほら見てみんしゃい」
仁王が指差す方向にはブン太が普通に自分の席に座っていた。これの一体どこが大変なんだろう。昼休みに自分の席にいるなんて普通のことだと思う。
『どこが大変なのよ』
「いや、よく見て下さいよ!いつもと違うじゃないっすか!」
そんなこと言われたって…。あ、そういえばブン太に何か足らないような。うーん、なんだろう?
『あ、お菓子、食べてない!』
「そうなんすよ!」
そうなら躊躇わず言ってくれればよかったのに。まあ、可愛いからいいけどね。
「名無しさん、聞いてきんしゃい」
『何で私?』
「彼女だからっすよ!」
調子よすぎるよ、赤也。可愛ければ何を言ってもいいじゃないって学んだ方がいいよ。そんなキラキラした瞳で見つめないで。
『…わかった、じゃあ聞いてくるよ』
私も気になるからね。何か任されたのは微妙な気持ちだけど。私はブン太のところに向かった。
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