PrinceU

□Winner
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『英二先輩ー!』



今日もテニスコートにこだまする名無しさんの声。彼女が呼んでいる名は英二先輩だけど俺の彼女。




「名無しさんー!」



ちょっと抱きつかないでくださいよ、英二先輩。名無しさんは俺のなんだから。でもそんなこと言わない。俺はいつも見てるだけ。だって格好悪いじゃん、男の嫉妬なんて。






「おチビに会いに来たの?」


『英二先輩に会いに来たの!』




えへへ、と笑う名無しさんが可愛いすぎる。向けられているのは俺じゃないことがムカつくけど。
ほら、英二先輩の顔だって緩んだ。




「名無しさん、好きだよん!」



『私もす…っ!』




名無しさんの言葉が止まった。まあ、俺が名無しさんの口を手で塞いだからなんだけど。だって英二先輩に変なことを言おうとしたのはムッとする。






「あんた、英二先輩に何を言おうとしてたわけ?言う相手間違えてるんだけど」



『リョーマ…怒ってる?』




手を離してやると、くるりとこちらを向いた。うわ、ぐりぐりした名無しさんの黒目に吸い込まれそう。





「怒ってないけど、やだ」




珍しく素直になった俺を見て名無しさんが笑った。何か負けた気分。だけどやられてばかりは俺の性格的にありえない。






「俺だけを見てよ、名無しさん」




抱きしめながら言えば、ほら、真っ赤になった君。英二先輩からも名無しさんを取り返せたし。あ、何だか勝った気分。






Winner
(テニスコートなんだけどにゃ)
(わかってるっす、英二先輩)






-END-





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