PrinceU

□ビタミン
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本当は気がついていたんだ。でもリョーマくんが何も言ってこないからそれに甘えていた。だけどそれももう終わりにしよう。






『もう、別れよう』



電話で言った。本当は目を見て言いたかったけど、どうしても心が揺れて躊躇っちゃうから。でもちゃんと言わなきゃいけないから相手の顔が見えない電話で。





「あんた、何言ってるか分かってるわけ?」



電話越しなのに目に浮かぶリョーマくんの不機嫌そうな顔。それでも怯んじゃ駄目。今日言わなかったらずっと言えない。





「理由は」



それは疑問系ではなくて命令口調。理由なんて一つしかない。リョーマくんが言いづらいから私が代わりに言ってあげるの。






『リョーマくん、もう部活に集中していいよ』


「…何それ」


『そのままの意味だよ』


「電話じゃ話しにならない。今から名無しさんの家行くから』



え、それは困る。電話が切れる前に慌てて、会わないから!って言った。その後に機械音がしたから多分伝わったと思うけど。






目を見たら躊躇うから電話したのに、これじゃ意味がない。でもちゃんと言いたいことは伝えたから大丈夫かな。家に来たって会わなければいい。突き放せばきっと分かってくれる。









しばらくして家のチャイムが鳴った。はーい、とお母さんが出ていく声。何度かリョーマくんは家に来たことがあるからお母さんと話したことがあるけれど、まさか勝手に部屋に上げたりしないよね。お母さんが私を呼びに来たときに断ればいい。



ほら、トントンと階段を上がってくる音。そして部屋をノックする。…部屋をノック?お母さんが?いつもはしないのに?






「ねぇ、ノックしたんだけど聞こえなかった?」


『な、んで…』


「名無しさんは上にいる、って言われたから上がってきた」




…お母さんのばか。







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