PrinceU
□こんなのもありじゃないかと
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人生において刺激は必要か。その質問に大抵の人はYesと答えるだろう。何故ならばたった一度の長い人生において何もないというのは究極に耐えられないことなのだから。でもね、少し質問を変えてみようか。人生においてこんな状況は必要か。
「リョーマくんと別れてよ!」
この状況には定番である放課後に校舎裏の壁に追い詰められている私と追い詰めている女の子たち。彼女の大半はテニス部が誇るスーパールーキーの越前リョーマのファン。ちなみに彼は私の彼氏さん。
さあ、もう一度同じ質問をしよう。人生においてこんな状況は必要か。答えは否だ。まあ、それが分かったからと言ってこの状況が一変することはないけど。
「釣り合ってないって分からないの?」
釣り合ってないなんて分かってますよ、そんなこと。でもリョーマから告白されたんだもん。もちろん付き合うよねって。私も彼のことが好きで彼も私のことが好きで、そんなことを言われたら付き合わないわけないじゃない。私は自分の気持ちに正直になっただけ。
「本当に飽きないよね」
この声は私でも女の子たちでもやい。その声は独特なハスキーボイス。ここにいる人なら誰にでもわかるだろう。だってみんな同じ人を好きだからこうなっているわけだし。
「リョーマだ」
「それであんたはよく捕まるね」
「え、私のせい?」
部活の途中なのか左手にはラケットを持っている。さすがレギュラージャージも似合ってます。というか部活をサボってるんだ。いけないんだ。あとで手塚部長に言ってやろうかな。
「リョーマくん!私リョーマくんのことが好きなの!」
女の子の中のリーダー格の子がこの状況でリョーマに告白をした。もうこれは彼女のことを勇者って言っていいだろう。すごいな、やっぱりそれくらいの勢いは必要だよね。
「名無しさん、行くよ」
…上手くいくかは別にして。私はすごいと感動したけど彼の心には1ミリも届かなかったみたいだ。女の子の一世一代の告白をまるで聞こえなかったかのようにスルーするなんて。まあ、返事したらそれはそれできっと文句を言うだろうけどさ。
「リョーマくん…っ」
ほら、泣き出しちゃったじゃない。それでも彼はさっさと歩き出してその場を離れた。私は女の子たちを置いてリョーマのあとを追う。この風当たりは私にくるのに。
「今度また何か言われそう」
「そうかもね」
すっかり他人事ですか、リョーマさん。大半はあなたのせいでもあるんですが。女の子の恨みは怖いんだからね。
「何か言われても自信持ってよ。俺の彼女は名無しさんなんだから」
分かってますよ。私はその言葉だけであんな状況も必要かなって思ってしまう。単純?いいえ違います、ポジティブなんです。
こんなのもありじゃないかと
(刺激的でいいんじゃないでしょうか)
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