PrinceU

□片思い中?
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「きゃー!リョーマくん格好いい!桃なんかに負けるなー!」


「名無しさん先輩ひどいっすよ!俺のことも応援してくださいよ!」



「名無しさん先輩も桃先輩もうるさいっす」




そう言いながらリョーマくんが軽々とボールを打ち返してボールが桃のコートに落ちた。そこで審判である大石くんのコールが響く。




「ゲームセット!ウォンバイ越前」



きゃー!と周りが黄色い歓声をあげる。しかしそれに負けないように大きな歓声をあげるのは私。私は彼に絶賛片思い中だ。






「まるでフーリガンだね」


「笑ってないで何とかしてくださいよ、不二先輩!おかげで越前に負けちゃったじゃないっすか!」




桃がツカツカと私の方に寄ってきたかと思えば、不二くんに知らせるようにフェンス越しの私をラケットで差した。ラケットは人を差すものではありません。





「桃が負けたのは私のせいじゃないもんね。私が一生懸命リョーマくんを応援したからだよ!」


「何すか、その理由」



リョーマくんも私の方に寄ってきて呆れたように溜め息を吐いた。何しても絵になるほど格好いいです。





「でもちょっとうるさいかな」



あくまでもにこやかに、そしてサラリと不二くんが呟いた。そのたった一言にどれほどの圧が掛かったかは口に出すのも恐ろしい。リョーマくんを応援するときは邪魔だったフェンスも今は唯一の救い。






「もう一回言おうか?」


「いえ、一回で充分です!それでは次の試合からは不二くんを応援したいと思います!」


「分かればいいんだ」



この笑顔にみんな騙されていると思う。この人のオーラは真っ黒だってことを知って欲しい。






「名無しさん、誰が真っ黒だって?」


「怖いから!本当に怖いから!心を読まないでください」


「顔に書いてあるよ」




もう、どっちにしても嫌だ。桃はサクサクと逃げて行ったし、リョーマくんは見てるだけ。





「じゃあ、応援よろしくね」


「…やだ」



へ、今やだって言ったの私じゃないよね?心の中ではそう思ったけど口には出していないはず。私だって命は惜しいもん。頭の中がパニックになっていると不二くんがいつもに増して妖しく笑った。





「何で越前が嫌なのかな」



え、今やだって言ったのリョーマくんだったの?一体何が嫌なんだろう。そう思っているとリョーマくんが帽子のつばを軽く上げて私を見た。





「名無しさん先輩は俺だけの応援をしていればいいから」




何度も何度もその言葉が頭の中でこだましている。名無しさん先輩?とリョーマくんに話しかけられたら、思わずリョーマくん!と叫びたくなった。言うまでもなく、リョーマくんにうるさいと言われたけど。








片思い中?
(だから自惚れてしまいます)





-END-




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