PrinceU

□貪欲、強欲
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「ねぇ、リョーマ。壁打ち楽しい?」


自宅のお寺の壁と打ち合いをしているリョーマをぼーっと座って見てたけどある疑問が浮かんできた。会話をし始めたけど彼の目には目の前の壁と跳ね返ってくるボール、そして打ち返すためのラケットしか目に入っていない。あなたの彼女は壁なのかそれともボールなのですか。本物の彼女である私はテニスに勝てる日はいつにぬったらくるのでしょうか。




そんなことを思っているとはつゆ知らず、リョーマは今だにひたすら壁とのラリーを続けている。彼が所属しているテニス部は青学の中で部活時間が長い方なのに家に帰ってまでも壁打ちをするなんて。元来、運動音痴の私からは理解するなんて不可能。だから知りたくて聞いてみた。




「別に」


「今やってるのに?」



別に、ってことは楽しくないってこと?楽しくなければ続けられないんじゃないのかな。学校から帰ってまでも壁打ちをやっているのに。うーん、よくわからない。





「名無しさんが話しかけるから集中力なくなった」



ごめん、と言ってみたものの私が話しかけたからってリョーマの集中力がなくなったことなんてないじゃん。リョーマがぐいっといつもの炭酸飲料を飲んだ。





「テニスでは誰にも負けたくないから」



飲み終えてから一呼吸置いてリョーマがボソリと呟いた。そっか、楽しいかなんて質問は彼にとって愚問だったわけね。ごめん、と私はもう一度謝った。でもリョーマは十分テニスが上手いと思うし、誰にも負けないと思うけどな。完全に素人目ですけど。






「まだまだだね」



その言葉は私に言っているのか自分自身に言っているのか分からないけど、いつものリョーマの口癖とは少し違う風に聞こえた。








貪欲、強欲
(勝利に対して努力を惜しまない)




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