「佐倉」
何?と来てもらって失礼だけど、佐倉に特に用はない。ただ話している振り、と言うか佐倉が勝手に話しているから俺は聞いている振りなんだけどね。
佐倉の後ろをちらりと見ると、名無しさんがムッと頬を膨らませて軽く涙ぐんでいる。あれは怒っているのか泣いているのかよく分からない。
最初に気付いたのはついこの間の話し。ただ佐倉に用があったとき、何故か後方から鳥肌が立つような視線を感じた。見ていたのはやっぱり名無しさん。
何だろう?と一瞬考えたが、答えはいとも簡単に俺の心の中に出た。
…愛故の嫉妬。
俺は名無しさんのその反応が可笑しくて、分かっていながらもつい意地悪を繰り返した。
佐倉と話をしながら、ちらりと名無しさんの顔色を伺って、もう可哀相かなってところで話を終えた。
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