危力の集まりが終わって、俺は名無しさんに会いたくて急いで帰っていたのに、何でこんなことになっているんだろう。
目の前に立っているのは何だか名前も知らない女。棗くん!と引き止められてからそいつは俯いたまま、何も話していない。
燃やして脅そうか、と一瞬思ったが、この前名無しさんに女の子には優しくしないとダメ!って怒られたばかり。優しくするのは名無しさんだけで十分だと思うんだけど。あ、名無しさんのこと考えていたら更に会いたくなった。
『棗くん……。私、棗くんのことが好きなの…っ』
カタカタと震えながら言った名前も知らない奴。俺も名無しさんに告白した時、こんな風だったのかと考えると何とも言えない笑いが込み上げてくる。
「無理に決まってんだろ」
そう言って再び名無しさんへの道を急ぐ。このことを話したら、また名無しさんに女の子に優しく!なんて言われるんだろうか、そんなことを考えると自然と足早になった。
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