翼のことが好き。
そんな感情は私の心の中にずっとあって、ただ声に出していなかっただけ。いつかこの気持ちを伝える日を伺っていただけ。
だけどついにやってしまった。何をって?…後悔だよ。
「俺、美咲と付き合うことになった!」
あまりに嬉しそうに報告にくるから辛い顔をすることが出来なくて、私は笑いたくないのに微笑んだ。
『おめでとう!』
ねぇ、私ちゃんと笑えてるのかな。初めて愛想笑いというものをした。辛くて苦しいけど涙を流すかわりに。
「ありがとうな!本当に名無しさんが友達でよかったぜ!」
『幸せになってね』
どうやら思ってもいないことをツラツラと並べるのが出来るクチらしい。本当のことは何ひとつ言えてないのに。
「じゃあ俺、美咲が待ってるから行かねぇと」
そう言って翼は私から離れて美咲のもとへ。並んでいる画がお似合いでまた苦しくなる。
私はもう見えないように彼らに背中を向けて歩き出した。
さよなら、私の初恋
(もし伝えていたら)
(何かが変わっていたかな?)
-END-
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