AliceU
□真夜中の訪問
1ページ/1ページ
『棗、ぎゅってして』
迷惑だと知りながらも夜中に棗の部屋に押しかけた。押しかけたと言っても隣の部屋。
私の急な発言に棗は驚いていたが、何も言わずにすぐに抱きしめてくれた。頭をゆっくり撫でられると身体中の力が抜ける。
「何かあったのか?」
『棗に振られる夢、見ちゃった…』
そんな夢にただ不安になっただけ。でも抱きしめられた温もりで不安は徐々に溶かされていく。
「正夢になるわけねぇだろ」
『分からないじゃない…』
私がそう返すと、棗がムッとしてデコピンをした。う、地味に痛い。
「ありえねぇ。これから先、一生だ」
ギュッと抱きしめ直してくれる。
でも、棗知ってる?
『…一生って長いんだよ?』
「わかってる。少しは信用しろ」
だってあんな夢見ちゃったんだもん、なんて考える私は捻くれているのかも。でも彼の腕の中でこんな甘い言葉を囁かれてるんだから、我ながらすごい愛されてるんだと思う。
『棗、大好き!』
「…当たり前だろ」
棗がフンと鼻を鳴らす。多分照れてると思う。
『安心したら眠たくなっちゃった…』
「じゃあ寝るか」
棗に誘われてベッドの中に入る。布団を掛けると全身が棗の匂いに包まれる。彼の腕枕に彼の匂い。これ以上の安堵感はきっとない。
『おやすみなさい…』
薄れゆく視界で棗にそう言って私は眠りについた。
真夜中の訪問
(本当に寝たのかよ)
(我慢してるよな、俺)
-END-
.