『ねぇ、どうして棗はモテるの?』
名無しさんが意味の分からないことを言い出した。どうしてって聞かれても俺が分かるわけねぇだろ。
そもそも振り向いて欲しい奴に好かれなきゃ意味がない…なんて本人に言えないけど。
「意味分かんねぇ」
『だって棗の性格は歪んでるし、目つき悪いし、言葉遣いも悪い』
一体何なんだ、こいつ。俺の悪口ばかり並べやがって。つまり、俺のことを好きな奴の気持ちが理解出来ないってそういうことか?
『それに棗が自分を犠牲にしても戦ってることや本当は優しいことも知らないのに…』
「は…?」
そういうところを知って好きになるんだったら分かるのにな、って名無しさんが笑った。その笑顔が無邪気で可愛くて、少し意地悪をしたくなった。
「それってつまり、名無しさんが俺のこと好きってことか?」
ただの冗談のつもりで言っただけ。それなのに名無しさんが真っ赤になったから俺はようやく確信した。
それってつまり、
(そんなこと言ってない!)
(真っ赤な顔して言われても…)
-END-
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