AliceU
□アイロニーと嫉妬
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自分の恋人がモテるって、彼女からしたら面白くない。きゃーきゃー言われているところなんて見ると、胸のあたりがぐるぐるする。
『棗がモテすぎている…』
「名無しさんと付き合ってから柔らかくなったもんなー!」
『じゃあ、棗がモテるのって私のおかげじゃん』
おかげなのか、せいなのか分からないが、とりあえず自分で自分の首を締めたらしい。何てアホなんだ。
「やだ、って言ってくればええやん」
『それは妬いているみたいで恥ずかしいの』
「実際、妬いているやろ!」
それはごもっともだけど。認めたくないっていう乙女心なのです、きっと。ブーッと膨れていると棗は目が合った。慌てて表情を戻すと、鼻で笑われた。その態度にカチンときて、私の視界から外してやった。
…ムカつく。もう棗なんか知らない。どこの誰とでも仲良くしていればいいんだ。もう知らないんだから。
「名無しさん!」
『何、みか…ん!』
言葉が途切れ途切れなのは、棗が目の前に来ているから。しかもキス出来そうな距離。さっきまでちょっと離れていたじゃん。分かった、ついに瞬間移動のアリスも持ったのか。うん、そんなわけない。
『さっき鼻で笑ったでしょ』
「名無しさんが不細工すぎて」
あまりの失礼な発言に文句を言おうと思ったのに、声が出なかった。さっきのキス出来そうな距離がなくなって、より近くなった。所謂キスしている。
みんな見ているんですけど、って頭に浮かんだのは一瞬。その後は棗のことしか考えられない。
「妬きすぎなんだよ、バーカ」
唇が離れたとき、彼は私の髪の毛をゆっくり撫でながらそう言った。名無しさんしか見てねぇ、って続けて。その流れが格好良くてズルい。
『妬かせないでよ、バーカ』
私は照れ隠しにそう言った。
アイロニーと嫉妬
(文句のひとつも言えない)
(やっぱり棗はズルい)
-continue-
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