AliceU
□刹那に見た魔力
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どう考えたっておかしい。私があんな奴を好きになるはずがない。だって第一印象はお互い最悪なはずだから。少なくも私は最悪。…理由?とてもじゃないけど言いたくない。
それなのにどうして私があいつを好きだなんて、ふざけた噂が広まるの?そしてどうして私は今、女の子たちに囲まれているの?
「棗くんが迷惑しているって分からないの?」
リーダー格っぽい子がズケズケとありもしないことを話し出す。もうさっきから何度も、違うんですけど、って言っているのに聞く耳を持ってくれない。
「人の話聞いているの!?」
その言葉、そっくりそのままお返しします。私はさっきから何度も言っていたんだから。でももう言えない。さっきので私の中の勇気ポイントを全て使っちゃった。チキンな私には精一杯頑張ったと思う。
「あんた、いい加減に…っ」
「…何やってんだよ」
あらら、こんな時に現れるから私は女の子たちの反感を買うんだってば。ほっといてよ、と思う反面、やっぱり素直に助かった。
「棗くん…!」
そりゃ驚きますよね。まさかの自分たちの好きな人が登場だもん。ご愁傷さまです、と心の中で思っていると女の子たちがバタバタと離れていった。
『また敵が増えた…』
強がって大袈裟に溜め息を吐くと、棗に鼻で笑った。何だ、この余裕な感じ。私はあんたのせいでこんなに大変な思いをしているっていうのに。そう思っていると、ちょっとした出来心で不意に棗を困らせてみたくなった。
『こういうのがあったらまた助けてくれる?』
どうせ、意味わかんねぇとかその辺の言葉が返って来るのかと思った。でも彼はその予想を覆した。
「しょうがねぇから俺が名無しさんを守ってやる」
彼は悩んだり、ましては困った表情もしていない。そのかわりニヤリと妖しい表情をひとつ。言葉といい、表情といい、彼のすべてがまるで魔法に掛かったように私の鼓動を早くする。
あーあ、あの噂を本物にするはずなんてなかったのに。今度また女の子たちに囲まれたら、あの噂を否定しないでおく…かもしれない。
刹那に見た魔力
(アリスの他に持っているでしょ)
-END-
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