AliceU
□未来を信じて
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任務を重ねる度に彼の体調は悪くなっている。それを分かっていながらも任務をさせ続けている学園も先生も嫌い。
『ねぇ、棗』
「何だ」
彼の部屋で2人きりでいるにも関わらず、相変わらず彼女の私にもニコリともしない。優しい顔はしてくれるけど。私がどれだけ君のことで悩んでいるか分かってますか?
『学園から脱走しよ』
「やめとけ」
読んでいる漫画から目を話さずに彼はそう言った。話に乗るとは思ってなかったけど、止められるなんて思ってもみなかった。
『どうして?学園が嫌じゃないの?』
「嫌だけど。それでもここで名無しさんに会えただろ」
そう言われると何も言えなくなる。お互い天賦の才能を持って生まれてこの学園に入学した。アリスを持って生まれなければ出会わなかった。そう考えると奇跡と呼べる。
『棗は辛くないの?』
私の質問に彼は漫画をパタリと閉じて私を見つめてくる。うわ、緊張する。いつになっても慣れない綺麗な顔。
「名無しさんがいれば大丈夫だ」
ずるい。本当に棗はずるい。サラッと甘いことを言うんだもん。その術中に私は嵌っている。
「卒業して堂々と学園を出る」
『じゃあ私もそうする。外に出たって棗がいなきゃ意味ないもん』
だから…、その続きを言うのはやめた。これからの将来も棗といるんだ。私たちの未来には悲しみなんてない。
『学園を出たら一緒に暮らそうね』
「俺、ルカとそんな話しをしたことがある」
『やだ、2人がいいの。ルカには私から言っとく』
勝手にしろ、と笑われた。こっちは必死なのに。ルカには悪いけど明日言っておこう。多分笑って許してくれるはず。
「名無しさんとずっと一緒だな」
『何かプロポーズみたい』
「違うけど」
『え、違うの?』
うわー、変な勘違いしちゃった。これは恥かしい。そうだよね、まだまだずっと先の話だもんね。
「プロポーズは学園を出る時に言う」
フワリと抱き締められた。私は嬉しくて、涙で頬を濡らしながら何度も頷いた。
未来を信じて
(棗といつまでも一緒に)
-END-
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