AliceU

□泡沫
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何で棗なんだろう。そんなことは今までたくさん考えた。だけど一度だって答えが出たことがない。もし出るとしても結局好きだから、って言葉で終わるだろう。







『はぁー』


「でっかい溜め息やな。どうしたん?」




蜜柑が隣にいることに気づかずに大きな溜め息を吐いてしまった。心配そうに顔を覗き込んでくる蜜柑に私は罪悪感を抱く。






『何でもないよ』



なるべく笑顔で接する。それが友情を壊さない1番の方法だから。私が自分勝手に感情を出したらきっと蜜柑に八つ当たりをしてしまう。






「何かあったら言うんやで!」




きっと蜜柑は何も分かっていない。蜜柑が棗のことを好きなのと同じぐらい、いや、もしかしたらそれ以上に私も棗のことが好き。だけど彼の視線はいつだって蜜柑に向けられている。そして蜜柑の視線も棗へ。私の入れるような隙間なんて1mmもない。








『…棗のばーか』


「誰がばかだって?」




あ、今度は後ろに棗がいた。何だか今日は人の気配を感じらない日だなあ。ドキドキするけど普通に接しないと。







『だから棗がばかなの』


「名無しさんに言われたくねぇ」



…確かに。私が1番ばかかもしれない。さっさと告白して振られれば楽なのにな。もし私が棗に好きだと伝えたら一体どんな顔をするんだろう。いや、棗だけじゃない。それを知った蜜柑も。やっぱり見たくないな。








泡沫
(全部消えるのは嫌)




-END-




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