AliceU

□何とでも言ってくれ
1ページ/1ページ




君が俺のところに来る理由なんてただひとつ。いつだって君の中心は棗で回っているんだから。でも棗の中心は佐倉で、佐倉の中心は棗。叶わないって分かっているのに何で名無しさんは願っているんだろう。そんなことを言えば俺も同じだけど。




「棗と蜜柑の間に入れる隙間はないんだよね」



どうやらそれは本人も自覚しているらしくて。でも自分の気持ちに嘘がつけないらしい。諦めなきゃ、でも振り向いてほしい。その考えが名無しさんの中を渦巻いているんだろう。




「いっそのこと、告白してみれば?」


「それで駄目だったら?」



諦める。俺がそう言うと名無しさんは下を向いて悲しい顔をした。人には諦める、とか言って自分は名無しさんのことを諦めるつもりはない。俺の性格、歪んできたかな。





「振られたら慰めてくれる?」


「もちろん」



そしてあわよくば君の心の中へ溶け込みたい。そんなことは狡いなんて分かってるけどもう止められそうにない。俺だって君のことをずっと見てきたんだから。




「じゃあ棗に言ってくる」



名無しさんが覚悟を決めて歩き出した。君の背中を押した理由が俺の身勝手な理由だと知ったら君はどう思うんだろうか。そして俺の背中を押してくれるのは誰なんだろうか。きっとそれは帰ってきた君の涙だろう。






何とでも言ってくれ
(酷い、狡い。何でもいいよ)




-END-


.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ