AliceU

□転がってあげる
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馬鹿野郎。棗の馬鹿野郎。棗なんか蜜柑とずーっとずーっと仲良くしてればいいんだ。私だってほかの人と仲良くするんだから。





「あ、翼先輩!」


怒ったままツカツカと歩いていたら、いつの間にか初等部から中等部に着いていた。そこで見つけたのは翼先輩。





「どうした?棗と喧嘩でもしたか?」


「何で分かるんですか」


名無しさんの顔に書いてある、と笑う翼先輩が妙に大人っぽくて軽く心を掴まれた。でもやっぱり1番は棗だなって。怒ってるはずなのにそんなことを思ってしまう。





「名無しさん、後ろ」


俯いている私の肩を叩いてそっと耳打ちをされる。その言葉通りに後ろを振り向くと完全に苛ついている棗がいた。眉間に皺を寄せているせいで悪い目付きがさらに悪い。





「こいつは俺のだ」


その行為はあっという間で腕をぐいっと引っ張られたと思うと、隣にいた翼先輩が視界から消えて目の前が真っ暗にある。その代わり鼻に広がる棗の香りと背中にまわされる手の温もり。私はそれに縋るようにギュッと抱きついた。





「棗の馬鹿。蜜柑と仲良くしていればいいじゃん」


言ってることとやっていることがおかしいなんて自分が1番分かってる。どうしてこう捻くれたことしか言えないんだろう。





「妬きすぎ」


そこでふっと微笑むなんてずるい。顔がかあっと熱くなるのが分かる。そうか、棗は妬かせるためにやってたんだ。





「性悪」


反論してみたけど何の効果もない。こうやって棗の術中にハマっていくんだろうな。まあ、抜け出そうとも思わないけど。







転がってあげる
(何でもいいかって思ってしまう)




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