何でこんな力を持って生まれてきたんだろう。天賦の才能なんてもてはやされているけれど私にとっては不幸でしかない。こんな力なんか欲しくなかった。
「…なんて思ったことない?」
ベッドに寄りかかりながら漫画を読んでいる棗に話し掛ける。突然のこと過ぎて意味分からないという顔をしていたが、すぐに普通に戻った。
「あるに決まってんだろ」
「今は?」
こんなに聞いてどうするのか、自分でも分からない。ただあると言った棗が変わったのかどうか知りたいだけなのかもしれない。
「思ってねぇよ、そんなこと。この力がなければ名無しさんに会えなかったんだろ」
びっくりした。棗が急に大人っぽく見えて知らない人みたいだったから。それと同時に胸をガシッと掴まれるくらい嬉しい。私に出会えたことでアリスを持ってよかったと思ってくれることに。
「私も棗に出会えて嬉しい!」
家族と引き離され、自由がなくなる力だけど棗に出会えたからよしとしよう。
ありがとう
(神様にも、棗にも)
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