AliceU

□闇夜の涙
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気がついたらバカみたいに雨宮を目で追っているらしい。無意識なんだね、とルカに笑われた。図星だから何にも言い返せねぇけど。あまのじゃく、と言われてうるせぇと呟いてみたけど何の意味もなかった。






「棗、相談があるんだけど…」


ある日の夜、雨宮が突然俺の部屋に来た。これが現実なのか夢なのか分からなくなるくらい驚いたけど、それをバレないようにポーカーフェースを保つ。とりあえず雨宮の話を聞くために部屋に入れた。




「何だよ」


雨宮が俺に相談なんて珍しくてどう対応していいか分からない。そもそも相談内容ってなんだ。
それなのに雨宮は何も話さずに俯いて黙ったまま。少し待ってはみたものの何も変化がないから俺は雨宮の顔を覗き込む。




「は?」


俺からバカみたいな声が出たのは雨宮が泣いていたから。ポロポロと涙を流して頬を濡らしていた。きっと俺のせいじゃないと思う。だったら何でこいつは泣いているんだ。





「私、昨日っ、ペルソナに…」


雨宮が嗚咽混じりに話し始めたと思えば急に出てきたペルソナの名前。本能的に嫌な予感がした。こいつは特力で珍しいアリスを持っててこの前までシングルだったのにトリプルになっていて。ああ、俺はどうしてもっと早く気づかなかったんだろう。




「危力に、入れって…」


嫌な予感はあたるらしい。俺の注意力が足らなかったんだ。もっと早く気づいていればペルソナを止められたのに。悪い、と小さく謝ったのは君に聞こえただろうか。






「任務についてはペルソナには嫌だと言い続けろ。それでもやることになったら絶対俺のそばを離れるな」


今更後悔してももう遅い。それならあの世界で君をどうやって守っていくかを考えるべきだ。覚悟を決めたのか雨宮が小さく頷いた。




「俺が守ってやる」


その言葉を発しながら俺は泣いている彼女を抱き寄せた。必ず守ってやる、この身に変えても。







闇夜の涙
(それを拭き取るのが俺であるように)



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