AliceU
□ひとしずく
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彼のことが好きだけど、すごく好きだけど。棗が守るべき人は私じゃなくて蜜柑だと思う。私は1人でも生きていけるから。だから棗はこんなところにいてはいけないの。
「いいのか、名無しさん」
ペルソナが何度も何度も聞いてきてその度に私は無言で頷く。珍しく心配されるくらい、私がこれからたった1人で行う任務は難しいらしい。ペルソナは棗と、って言っていたけど私が断った。
「命を縮めるタイプか」
任務に行こうとする私にペルソナが独り言のように小さく呟いた。それは一体誰を示しているのか。棗?それとも…私?まあ、そんなことどっちでもいいか。そもそも私はアリスで命を縮める前に今日がどういう結果で終わるか分からないんだから。
「気をつけろ」
優しいペルソナが気持ち悪くて思わず笑ってしまった。一体彼は何を考えているんだろうね。私には到底分からないことなんだけど。いってきます、とペルソナに告げて私は歩み出した。
少しすればあっという間に知らない人たちに囲まれた。いつもだったら隣に棗がいるのにな、と思う自分がアホらしくて笑える。思っていたよりも諦めが悪すぎる。
「好きだったよ、棗」
敵が一斉に雄叫びをあげるなか、今隣にいない彼に静かに告げた。帰れないかもしれないから今言わないと後悔すると思ったから。
ひとしずく
(涙が流れたのは気のせい)
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