AliceU
□いばらの心
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まだこんなに幼いのに将来を決めてしまうなんてバカだと大人は笑うだろうか。もし笑われても私の気持ちに一点の曇りもない。好きで大好きでたまらないから。 棗が何度も何度も抱きしめ返してくれるのなら何もいらないとさえ思ってしまう。
「棗、好き…」
今まで何度この言葉を彼に囁いてきたんだろうか。だけど彼は一向に同じ言葉を返してくれる様子はない。別に棗は私のことが嫌いなわけじゃない、と言っても決して恋愛感情を持って好きなわけでもない。だったら何でこうして抱き合っているんでしょうか。
「寂しいの」
ずっと前に初めてそう呟いたとき、彼は私を思いっきり抱き寄せてくれた。その時私は彼の腕の中の温かさを知ってしまった。それからはまるで中毒みたい。呪文のように寂しいや好きを繰り返してバカみたいに棗の温かさを求めている。
「名無しさん…」
彼は一体どんな思いで私を抱きしめているんだろう。本当は気づいていているんだ、棗の視線の向こうにはいつも蜜柑がいることを。でもまだ知らないふり。だってこの温もりを失ったらどうなるか分からないから。そういうことを棗も分かっているから私を突き放せないんだと思う。悪いけどずっと棗といるって決めちゃった。
いばらの心
(結局優しさに漬け込んでいる)
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