スターダスト

□ひそかに嘆く
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「もう大丈夫だ、名無しさん。アリスを使うな」


『もう少しだけ大丈夫だよ、棗。もう治るから』




私の手のひらから現れる光。その光に当てられた部位が治癒していく。これが私の治癒のアリス。


癒しのアリスとは少し違ってもっと大きな力らしい。
その代わり、副作用が2つ。1つは自分には使用不可。だから人にはすごい効果なんだろうけど。
2つ目は使いすぎると激しい頭痛に襲われる。




『…痛っ』



ほら来た。手当てしていた棗の傷口を見るとかなり回復していたから良しとしおう。





「こんなに可愛いのに堕天使なんて初校長に付けられてね。寧ろ天使でいいと思わない?」


『ルイさんの方が可愛いですよ』



「あらやだ〜!」

「カマだけどな」



サラッと言った颯くんは毎度のことながら学習能力がない。だからルイさんにボコボコにされるんだよ。






任務から帰ってきたみんなの手当てを行なうのが私の仕事。そのために私は危力にいる。…堕天使なんて名前をつけられて。そう、私は闇の世界に堕ちた天使。







「…帰るぞ」



初等部寮への道を歩き出す棗。私は彼の後をついていく。






「頭痛は治ったか?」


『だから大丈夫だってば!意外と心配性だよね』




明かりも殆どない帰り道は棗と歩くと怖くない。1人だったら絶対歩けない。








「じゃあ何かあったら呼べ」


部屋に着くと必ず言われるその言葉。そんなに言わなくても分かるのに。しかも棗と私は隣の部屋だし。やっぱり心配性だ。





『はいはい、分かってます。じゃあ、おやすみ』



バタリと棗の部屋の隣部屋に入った。部屋の時計を見ると、すでに深夜2時を誘うとしていた。任務があるとこんな時間になる。もう慣れたものだ。
…それにきっとまだ眠れない。






チカチカと手首についているブレスレットが光る。正しくはブレスレットについている瞬間移動のアリスストーンが光る。これはあの人のところに行くという合図。私に拒否権はない。






「来たか、名無しさん」


『あなたの強制でしょう、初校長』



私と同じような背丈なのに、大きな椅子に座って机に頬杖をついている初校長。そう、私は彼に呼ばれて瞬間移動をさせられた。




「いい加減、ここに住むのはどうだ」


『いつも通り、お断りします。出れない檻の中で、少しでも自由にしていたいので』




そうだったな、と初校長が怪しげに笑う。毎回同じことを聞くのは、いい加減やめて欲しい。




「こっちに来い。寝るぞ」



私は彼に引き寄せられてベッドに入る。眠るとき、彼は私を呼び出す。ただ私はただ彼の腕の中で眠るだけ。朝になれば、私は自分の部屋に帰る。ただそれだけ、感情なんて持ち合わせていない。…私はね。




「おやすみ、名無しさん」


彼は私の額に口付けて目を閉じた。








ひそかに嘆く
(嘘を吐いていることが)
(いちばんつらいこと)





-continue-






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