スターダスト

□それでも嘘を吐くこの唇
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毎日のことだけど、朝起きても寝た気がしないんだよね。その代わり授業中で補ってるけど。





「名無しさん、眠そうやなー」


『んー、いつものことだから心配しないで』





休み時間、机に伏していると蜜柑が傍にきた。寝起きの頭に響く声だが、蜜柑ならいい。





いつも眠そうな理由は誰にも言えない。まさか初校長が関わっているなんて、誰が想像する?





机に伏したまま、そんなことを考えていると、隣で棗が咳き込んだ。大丈夫?と心配するルカから離れて、棗は教室を出て行った。





「俺、見てくる」


『大丈夫、ルカ。私が行くから』




ルカを安心させるために微笑んで、棗を探しに行く。多分、北の森にでもいるんじゃないかな。







『やっぱりいた…』


「…名無しさん」




棗の息遣いが荒い。やっと咳が止まったのかな。彼の手をチラリと見ると、血がついている。
私は棗のそばに寄り、治癒のアリスを使った。





「また頭痛くなるぞ」


『大丈夫だよ、これくらい。気分はどう?』


「ああ、大丈夫だ」



…大丈夫じゃないくせに。私の力なんてただの一時凌ぎでしかない。






『ペルソナに任務やめてもらうよう頼んであげようか?』


「大丈夫だ。そもそも任務に行かせてるのは、ペルソナじゃなくて初校長だろ」



『じゃあ、初校長に頼もうか?』





そう言ってから気づいた。何言ってだろう、自分って。もう言ってしまったから遅いんだけどね。棗、聞き流してくれないかな…。






「お前、そんなこと言えんのか?」




…ですよね。まあ、初校長に言えると言えば言える。聞き入れてくれるかは分からないが。しかし、そんなことは棗に言えない。
冗談だよ、と笑って誤魔化した。棗は腑に落ちないという顔をしていたが知らん顔。






「あとさ、前から聞きたかったんだけど、何でいつも眠そうなんだよ」




あまりにグサリとくる言葉だった。そのせいで全部言ってしまおうかとも思った。だけどグッと言葉を飲み込む。






『体質とかかなー』



こんな嘘で誤魔化したとは思えないけど、仕方がない。みんなに、特に棗には知られたくないことだから。






『そろそろ戻ろうよ。ルカが心配してるよ』



私は少しの間、棗の顔が見れずに教室に戻った。









それでも嘘を吐くこの唇
(いつかみんなに言える日が)
(来るのでしょうか…)





-continue-




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