スターダスト
□救われたかったわけじゃない
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今朝起きたら、初校長は出掛けていなくて大きな椅子に腰かけていた。机に頬杖をつきながら薄っすら笑みを浮かべて。
どうしたんですか?って聞こうとした瞬間、ドアがノックされた。こんな場所を知っていてノックしてくる人なんて一人しかいない。
「入れ」
彼の声で入ってきたのはやっぱりペルソナ。今日は仮面を外している。
「どうした」
「日向棗のことで…」
日向棗?今そう言ったよね?棗の話なんだよね?
「貴様、名無しさんの前で…。まあいいだろう。棗がどうした」
「一度意識を取り戻して、また意識を手放したようです」
それって本当に棗の話し?何で彼がそんな目に合っているの?まさか、とは思うが嫌なことが頭を過った。
『まさか棗に任務をやらせたの…?』
まさかそんなことないよね。だって私と約束したもん。みんなに任務をやらせないでって。
「やらせた訳ではない。あいつが自ら進んでやったことだ」
それだったら約束を破ったことにならないだろう?と初校長が勝ったように言った。
…最低だ。忘れてた、初校長はこういう人だってことを。何でか気づかなかったんだろう。自分が嫌になる。そんなことを考えるより今は棗の状態だ。かなり重体なら今井さんと殿先輩が治療してるんだよね…。それでも回復が難しい状態なら私の力がいるはず。
『あなたは私との約束を破った。だから私をここから出してください』
「さっきも言ったように"やらせた"わけじゃない。あいつが"やった"のだ」
分かっていた、そう言われることは。だから、だったらせめて、ってことで頼むの。
『だったらせめて、棗の治療をさせてください』
初校長が破っていないと言うなら、私はここから出れない。しかし初校長に少しながらも非がある今の状態なら、出たしてはくれなくても我が儘を聞いてくれるかもしれない。
「…治療が終わり次第、ここに戻ることを誓えるか」
初校長は少し悩んだ末、私に近づきながら小さく言った。よし、棗の治療さえ出来ればこれでいい。私は誓いの意味を込めて、近づいてきた彼に口付けた。
救われたかったわけじゃない
(今の彼を救いたいだけ)
-continue-
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