スターダスト
□全速力少女
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棗の治療をしていい、と初校長の許可が下りた。私はペルソナに瞬間移動で棗のところに向かう。そこではやっぱり今井さんと殿先輩がいた。
「名無しさん!おまえ今までどこに!」
懐かしい殿先輩との再会を楽しみたいけど今はそれどころじゃない。それにまた離れるから悲しくなるだけ。
『棗の容体は?』
「腹部を刺されたらしい。さっき一度目を覚ましたが、もう一度意識を失って危険な状態だ」
騒いでいる殿先輩とは対象的に今井さんが簡潔に答えた。それでもその表情には疲れが見えている。
代わります、と言おうとした瞬間、棗の容体が悪い方に急変した。周りに鳴り響く機械音。
『今井さん、代わります!』
「ああ、頼む」
『殿先輩も少し休んでいてください』
ベットいる棗に関わらず、久しぶりにアリスを使う。最近は誰にも使うときがなかったもの。だからかな、ちょっと変な感じ。
『どうですか?』
「まだだ…」
何で?私のアリスは自分に効果がない分、他人にはよく効くはずなのに。もしかして目の前にいる棗を助けられない?そんな嫌な考えが浮かんで突然身体が震え出した。
…弱気になっちゃ駄目。絶対助ける。そのためにここに来たんだから。必ず、私の何に変えても。
大きく深呼吸をして、ありったけの力が出す。私のアリスで辺りは光に包まれた。すぐに頭が痛くなったがそんなことはどうでもいい。絶対助けるって決めたから。
「どんどん回復している!」
殿先輩の声が聞こえた。棗の顔色を見るとどんどん良くなっている。でもまだだ。棗の意識が戻らない。彼の意識が戻るまで、そこからは今井さんに代わってもらおう。だから棗、目を覚まして…。
私のその願いが届いたのか、棗の指先がピクリと動いた。そして瞼も動いた。
「…名無しさん?」
ぼんやりと目を覚ました棗が私の名を呼んだ。そこでわたしは倒れたらしい。
全速力少女
(目の前のことにだけ)
-continue-
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