そのいち
□真夏のある日
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太陽が俺の真上に高く昇り、
容赦なく照り続ける真夏日。
どうしても暑くて、セントラルタウンで
アイスを買って食べながら寮へ帰る道。
そんな時、俺の前で同様に暑さにうだり、
灼熱の道路を歩いている人がいる。
後ろ姿ですぐに分かる彼女の名前。
「名無しさん!」
名前を呼ぶと、暑さと怠さで
丸まっていた背中が伸びて後ろに振り向く。
『ルカ!』
走ってくる最愛の彼女。
いつもなら名無しさんの腕が俺の背中に
手を廻して、抱きついてくるはず。
しかし、今日の彼女の行動は
一歩進んでは一歩下がる。
名無しさんが気にしているのは、
この暑さなんだろう。
抱き付きたいけど、抱きつきたくない。
そんな気持ちが名無しさんの胸の中で
ぐるぐると渦巻いているんだろう。
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