そのいち
□必要なのは君だけ
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女なんて…どんな奴も一緒だと思っていた。
ぎゃーぎゃー煩くて、媚びてきて…。
すぐ泣くし、すぐ落ち込むし。
だけど…ずっと傍にいるのに、
安らぐ女がいることを知った。
『棗!授業終わったよ』
明るいけど他の奴らよりずっと
落ち着いている声のトーン。
寝起きの俺にも耳障りではなく
安心出来る心地いい声。
「名無しさん…」
気が付くと、教室の中が紅く染まっていて
窓の方を見るともう夕暮れ時になっていた。
どうやら授業中、机に伏して寝ていたらしい。
周りを見ると名無しさんしかいない。
『おはよ』
多分ずっと俺のことを待っていたのに、
怒りもせず、傍にいてくれている。
俺は目を覚まし、椅子に座り直して
机を挟んで前に立っている名無しさんに
無意識に手をゆっくりと伸ばした。
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