『棗、好きだよ?』
なーんて甘い言葉を彼に囁いても、彼から甘い言葉が返ってくる訳ではなく……。
「知ってる」
その一言だけ。
私が君を好きだなんて学園中の生徒は愚か、先生達だって知っていることだけど……。
私は彼の言葉や行動の一つ一つにドキドキするのに、棗は私にドキドキしないのかな。
『ねぇー、蛍!どう思う?』
「ただの惚気かしら?」
そう言いながら、チャッとバカン銃を構える蛍。
『違います、だからそれを下ろしてもらえませんか』
そう願うと、蛍がクスッと微笑んで下ろしてくれた。
「彼をドキドキさせてみたら?」
『どうやって?』
「名無しさんからキスするとかよ。きっと名無しさんのことだから、一度も自分からキスしたことないでしょう」
…蛍さん。何故かそれをご存じで?
思いっきり図星。だって自分からなんて恥ずかしいじゃん。
『…出来ないよ』
「彼、喜ぶと思うけど」
…棗が喜ぶ…?
蛍のその一言で私の心は決まった。
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