そのいち
□罰ゲーム
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「早く」
『本音に無理だから…っ』
「負けたのお前だろ」
『そうだけど…っ』
さっきから彼氏の棗にキスをせがまれています。あ、私の名前は雨宮名無しさんです。
なぜこんな風になったかというと…、あれは棗とテスト勉強をしていたとき。
「名無しさん、こんなのも分かんねぇのかよ。ばーか」
『ばかじゃない!』
2人でテスト勉強中。算数の分からない問題を棗に聞いていると(正しくは聞きまくっていると)、呆れた棗が暴言を吐いてきた。
(言い過ぎ?別にいいの!)
俗に言う、売り言葉に買い言葉。
棗よりは頭悪いかもしれないけど、自分的に他の子よりは頭がいいはず。というか、棗が頭よすぎなだけ。
「俺よりばかだろ。テストで俺に勝ったことねぇじゃん」
『あれは……っ、本気じゃなかったからだもん!』
苦し紛れの言い訳。もちろん私は棗に勝つために本気中の本気でやった。けれど勝てなかった。
「…ふーん。じゃあ今回は本気でやるのか?」
あれ、意外と苦し紛れの言い訳って気付かれてない……?
『今回こそは本気でやるよ!!』
私は立ち上がって腰に手をあてて、高らかにそう宣言した。
「じゃあ全教科の合計点数で負けた方が罰ゲームな」
『うん!望むところ!』
この時は気付かなかったんだ。
でも今思い出してみると、棗に私の言い訳が通じる訳がないこと、棗からの勝負事には必ず乗ること。
…そして私が勝負を受けた時に彼の口角が上がったことに。
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