そのいち
□私の弱点
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今日は学校がお休みで、彼氏の棗の部屋でゴロゴロしていた時。
「名無しさんって本当に耳弱いよな」
『何、いきなり。それに……別に弱くないよ』
急に何を言いだすんだろう。あ、ちょっとだけ間があったことは、あまり気にしないでください。
「耳、弱いだろ?」
弱いけど…というか棗が1番よく知ってることじゃん。そうやって改めて聞くのはズルい。だから思わず反抗的な返事をしてしまうのは仕方がないこと。
『弱くない』
「ふーん」
何だろう。棗のふーんはいい感じがしたことがない。何か企んでいるようにしか見えない。
『何よ』
「…別に」
あれ?珍しく大丈夫そう…かも。いつものニヤっとした妖しい笑みがない。
そう自分の都合よく解釈して、一先ず安心と思っていた矢先…―。
「…名無しさん」
不意討ち。
いきなり抱き寄せて耳元で私の名前を囁くんだもん。しかもいつもよりも甘い甘い声で。
「…名無しさん」
また囁く。耳に唇が近づくんじゃないかってくらい近い。棗は本当に意地悪だ……。
『な、に…』
多分私の顔は紅い。不意討ちに甘い声…どれも好きなものばからだから。
「弱いじゃん」
『それは棗が…っ!』
「俺が…?」
ズルい。何でそんな顔をするの?文句の一つも言えなくなって、代わりに甘い言葉を囁きたくなる。
『棗が……好き、だから…』
棗の意地悪な顔からの優しい顔が好き。
私の弱点
(声、行動、仕草。棗の全て)
(私の弱点だって知ってた?)
-END-
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