短編集(他)

□――を好きになった鮫
1ページ/2ページ

【――を好きになった鮫】


「有り得ない…有り得ない…!!」


広い部屋のソファーに座り、怒り顔で言う彼女は架燐。


「何がですかー?」


隣に座っている、蛙の被り物をした少年が聞く。


「何がですかー? じゃない!! ヴァリアーって、拉致集団なワケ!?」


遡る事…数分前――。
門外顧問である架燐は、あるファミリーの屋敷に居た。
任務で、悪質なファミリーを殲滅しに来たのだ。
――…数人の門外顧問の者達と一緒に。
だが、彼女は一人で敵を処理していき――…。


「これで……終わりかな?」


一時間程して、大体の敵を処理した架燐。
下に目をやれば、彼女よりも屈強そうな男達が倒れている――。


「……うん、終わったね」


そろそろ門外顧問のボスとも言える、沢田家光が敵のボスを処理しているだろう……。
そう考え、屋敷の玄関まで来て……扉を開けた瞬間――。


「アンタが、門外顧問のイル…」

「てめぇが、“イルカ”かぁ!!?」


蛙の被り物をした少年と、ロン毛の男が立っていた。
――…“イルカ”というのは、彼女のコードネームであり…元通り名。


(ヴァリアーだ…)


二人が着ていた服から、自分達の仲間――ヴァリアーだと分かった。


「そうだけど……」

「ミー達は…」

「知ってる。ヴァリアーの幹部、スクアーロとフランでしょ?」


所属は違うとは言え、幹部の顔ぐらいは知っている。


「知ってんなら、話がはえぇ!!」

「一緒に来て貰いますー」

「は? 一緒に…」


……聞き返す前に、私はスクアーロに抱えられていた。
で、そのままヴァリアーのアジトに直行…。
……直行ではなく、“連行”されて――。


「普通、あんな風に連れて行く?!」


――…今に至る。
…というワケだった。


「ミーの時も、あんな感じでしたよー」

「マジで? やっぱり、拉致集…」

「ゔお゙おおい!!」


突如、耳の鼓膜を突き破りそうな大音量の声。


「………ちょっと!! 煩いんだけど!!」


負けじと、声を張り上げる架燐。


「任務だぁ!!」


……何の効果もなかったようだ。


(……むかつく!)


少し腹が立つ。
しかし、そんな事など、スクアーロは分かるはずもない訳で……。


「来い!! イルカ!!」

「………煩い鮫」


と、彼女が呟いた言葉も……スクアーロの声の中に消えた――。



×  ×  ×



早速、任務へと来た二人。


(まさに…イルカだな)


刀を両手に持ち、雨の炎をまとい、飛び跳ねるように戦う架燐。
その姿が、海面を飛び跳ねるイルカに見える事から――。


くるっ……ザシュ!


――“イルカ”という通り名が付けられた。
と言っても、それも三年前の話である。
三年前、彼女は家光に誘われて門外顧問となったからだ。


「ゔおぉい!! イルカぁ!!」

「うるさっ! 何よ!?」

「お前には、俺の補佐をして貰うぞぉ!!」

「はあ…!!?」

「お前の実力は確かだからなぁ!!」


そう、架燐の実力は門外顧問にはもったいない…。
という訳で、ヴァリアーに拉…勧誘されたのだ。
もちろん、家光は承諾している。
知らないのは、彼女だけ。


「四の五の言わずに、俺について来い!!」

「分かったわよ……よろしく、鮫」


……勝手な男。


「隊長と呼べぇ!!」

「……ふっ…くすくす」

「?! 何に笑ってやがる!!」

「ごめん、ごめん! よろしく、隊長さん?」


上目遣いで、少し大人っぽい笑顔――。


「!!///////」

「あ…私の名前…言ってなかったね。私の本当の名前は…架燐」

「架燐…////」

「まぁ…好きに呼んで。イルカでも、架燐でもいいから」

「おぉ…//////」



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ