短編集(他)

□王子と姫はゲーム中
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【王子と姫はゲーム中】


「ししし♪ 今日も王子の勝ち♪」


とある屋敷にて――頭に王冠を着けた少年が笑う。
隣には…ウサ耳の着いたフードを被った少女が立っている。


「ま…負けてないもん!」


ほんのり頬を赤くし、少年の言葉に反発する少女。


「どー見ても、王子の勝ちだろっ」


右手にキラッと光るナイフを持ちながら、少年は言い放つ。


「む〜〜! 引き分けだもん!!」


眉をハの字にして、少女は怒鳴るように言う。


「ちげーし。認めろよ。王子の方が…多く敵を殺ったって事」


――この少年、実はマフィア・ボンゴレの独立暗殺部隊の幹部であるベル。


「ぜぇったい! 認めないもん!!」


……少女である架燐は四ヶ月前、新しく入ったベルの後輩。
リング争奪戦以来、抜けていた雲の幹部として来たのである。


「ししし♪ 可愛くないコーハイ」

「べー!」


さて、今までの二人の会話のワケを話しましょう。
架燐とベルは…ゲーム中なのだ。
どちらが、如何に多くの敵を殺れるかを――。
……既に三ヶ月も前の話だが。


「ベルなんて知らないもん!!」

「ししし♪ 可愛くねー」

「い…いいもんっ!!」


そう言うと、架燐はプイッとベルに背中を向けた。


(いい…もん……ベル…なんて…)


悶々と少し拗ねた気持ちで思う架燐。


(ししし♪ 素直になれば、可愛いのにな♪)



×  ×  ×



「マーモン!!」


――先程の任務から戻って来た架燐。
戻って来るなり、ある人物の名前を呼ぶ。


「……また?」


自分の名前を呼ばれ、振り返る赤ん坊。
この赤ん坊は…霧の幹部のマーモン。
――その返事は、少し嫌そうな感じだ。


「いいでしょ! またベルがね!」

「ハァ……料金取りたいね」


……実は、マーモンはいつもベルとの事を聞いているのだ。
いや……正確には聞かされている。


「ね! 酷いでしょ!」

「ふぅん……素直に認めたら?」

「マーモンまで〜!! いいもん! いいもん!!」


ぷくっと頬を膨らませる架燐。


「ハァ……」


素直になれば、可愛いと思うんだけどね。
マーモンもそう思うが、あえて口には出さない。
言った所で、素直になる架燐ではないからだ。


「マーモンなんて知らないもん!!」

「……ハァ…」



×  ×  ×



翌日――…会議室にて。


「それで? 誰を行かせるのぉ? スクアーロ」


椅子に座り、一番奥の椅子に座っている男に尋ねる晴の幹部・ルッスーリア。
スクアーロと呼ばれた男は、少し考える素振りを見せた後…。


「……架燐とベルに行かせる!!」


と、言った。
その瞬間、架燐がベルに向かって、


「ベル!! また勝負だからね! 今度こそ、絶対勝つんだから!!」


ビシッ! と指を差し、言い放った。


「ししし♪ いーよ、今度こそ負けを認めさせてやっから♪」

「そう言っていられるのも今の内だもん!!」


などと言い合う二人。
そんな二人を見て、


「うふっ♪ 相変わらず仲が良いわねぇん♪」

「ハァ……少しは変わって欲しいね」


ルッスーリアとマーモンは思った事を口にする。
だが、二人の会話など架燐とベルには蚊帳の外。


「今度こそ、ぜぇぇったいに勝つもん!!」

「王子が勝つに決まってんじゃん♪」


またまたゲーム開始――。



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