短編集(他)
□愛を叫びましょう!!
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【愛を叫びましょう!!】
――…とある暗殺部隊の朝は……彼女の一言で始まる。
「ふふふ♪」
バンッ!!
暗殺部隊のアジトの窓を勢いよく開ける彼女。
と、次の瞬間――
「たいちょー!! 愛してますー!!」
外に向かって、思いっきり叫ぶ彼女・架燐。
瞬間――バン!! という扉を乱暴に開ける音が廊下に響いた。
「止めやがれぇぇぇ!!!」
架燐に負けない……いや、それ以上の叫び声がアジト内に聞こえてきた。
そして、ロン毛の男が彼女の元へズカズカと歩いて来た。
「朝っぱらから止めろぉぉ!!」
「あらら♪ 照れなくてもいいんですよ!!」
怒っている男に構わず、ニコッと笑顔で架燐は答える。
「だ…誰が照れるかぁぁぁ!!!!」
さっきより大きい怒声が彼女に浴びられる。
だが、
「ほら! その時点で、照れてるんですよ!」
彼女は全然気にしていない。
「…………」
最早、言葉さえ失ってしまうスクアーロ。
「作戦隊長ー」
そこへ、霧の幹部・フランが来た。
「フランかぁ。何だぁ!」
「来週、沢田綱吉が来るそうですー」
沢田綱吉――
その名前がフランの口から出た瞬間…――
彼女の顔色が変わった――…。
「ぇ……ツ…ナ…?」
「? どうしましたー?」
「本当に……ツナが来るの…?」
……微かに震えている架燐の声。
よく見れば、瞳も微かに揺れている。
その様子は――『動揺』以外の何者でもなかった……。
(ツナ…ですかー)
架燐を見つめるフラン。
「…来ますよー」
何処か親しげに聞こえる彼女の呼び方――。
ちょっとした引っ掛かりが……フランに芽生える。
「そ…う……来るんだ……」
視線をフイッと、窓の外の青空に向ける…――。そう――大空に。
(ツナ……)
この時…――架燐の中には一つの想いだけ……。
「……?」
何時にない、彼女の様子を不思議に思うスクアーロ。
だが……理由を聞く事は、何故か躊躇われた…――。
(……沢田綱吉と何かあったんでしょうかー?)
そう思うフランだったが…――
フランもまた……聞く事を躊躇われた――。
「おい、ツナ」
ボンゴレ屋敷の応接室で、エスプレッソを片手にツナを呼ぶリボーン。
「……何だよ」
同じく、エスプレッソを飲んでいるツナ。
カップに視線を落としたまま、短い返事を返す。
「来週、ヴァリアーに行くそうだな」
「…だから?」
「大丈夫なのか? 架燐がいるだろ」
ツナを射抜くように見るリボーン。
しかし、ツナはカップに入っているエスプレッソを見るだけで――
リボーンと目を合わせようとしない。
「………もう関係ない」
「……そうには見えねーけどな」
目すら合わせようとしないのでは、説得力などあるはずもない。
「これで良かったんだ!!」
――初めて、ツナが声を荒げた。
(たくっ……ダメツナが…)