短編集(他)
□報酬は五円チョコかな
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【報酬は五円チョコかな】
全てが闇色に染まる時刻――。
彼は二人の仲間と、ある場所にいた――…。
「二人共、ちゃんと仕事してよ」
この場の指揮をとっている彼は、自分の後ろにいる二人に念を押す。
すると――
「してるじゃないですかー」
「しししっ。お前がいなきゃ、もっと出来るけどな」
王冠を着けた青年・ベルが、カエルの被り物をした少年・フランに言う。
「それは、ミーのセリフですー」
「はっ? オレのセリフだし」
――…二人の口喧嘩が始まりそうな雰囲気。
それを見て、念を押した彼――
フードで顔を隠した、マーモンからは「はぁ…」と溜め息がこぼれた。
「いいから行くよ」
このまま待機していては、本当に口喧嘩が始まってしまう――。
そう判断したマーモンは、二人を促す。
「了解ですー」
「仕方ねーな」
促され、二人はしぶしぶ口喧嘩一歩手前の会話を止める。
「じゃあ…行くよ」
マーモンのその一言を合図に…三人は目の前の屋敷の中へと――
姿を消した…――。
× × ×
「これは…」
屋敷へと入ったマーモン。
ところが、予想もしていなかった事態に――
冷静な彼も…動揺を隠せずにいた…――。
(一体…誰が…?)
そう考えるマーモンの足元には、既に暗殺された数十人の男達。
本来ならば、自分がやるはずだった男達…――
それが、一人残らず殺られているではないか。
(どこのファミリーだろう…)
とりあえず、自分が知っている限りのファミリーで考えてみる。
――と、その時、
「あれ? まだ残ってたの?」
少女らしき声が部屋の中に聞こえてきた。
しかし、姿は見えない。
(…術師…)
同じ術師であるマーモンは、瞬時に理解する。
――腕の立つ術師だと……。
「君…いい幻覚だね」
「は…? 貴方…何言ってるの…?」
「どこに雇われてやったんだい?」
「…それは言えない。でも、私はフリーのヒットマン」
「じゃあ、この仕事が終わったら…フリーに戻るんだね?」
「…そうだけど」
「なら…ヴァリアーに来ないかい?」
「…? ヴァリアー…?」
マーモンが少女と話している頃――
フランとベルも、マーモン同様…驚いていた。
「……何だよ。もう殺られてんじゃん」
「誰が殺ったんでしょうねー?」
「さーな。知らねー」
「…少しは考えたらどうですかー?」
「王子にはカンケーないし」
「ホント、堕王子ですねー」
「…てめー…王子に殺られたいワケ?」
同じく、数十人の男達が足元に倒れている中…――
二人は口喧嘩(?)一歩手前の会話を蒸し返す。
「止めて下さーい。マーモン先輩に言いつけますよー」
「カンケーねーし」
「そこは、止めろよ! ぐらい言う所ですー。本当に堕王子ですねー」
「てんめっ!」
――こうして、二人は帰るまで喧嘩していたそうな。