遊び!遊ぶ!遊べ!

□出発編
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さて、先程と打って変わって、ここはイタリアのとある町――。
そこの広い広い屋敷の一室に、腰まで長い黒髪の女が一人と、金髪の男が一人。
男は立派な机に座り、その机を挟んだ先に、女は立っている。


「本当に行くのか? オレは心配で仕方ねーんだが…」


実に不安そうな、「心配です」と顔で言っているような金髪の男。
彼は、キャバッローネと呼ばれるマフィアのボスだ。
…優しげな雰囲気と、女性なら、思わずドキッとしてしまいそうな好青年の見た目とは裏腹に。


「大丈夫ですよ。ボスよりは、しっかりしてますから、私」

「……いやいや。心配するだろ! お前はオレの大事な…」

「はいはい。大丈夫ですから、ボスはお仕事しましょう。溜ってると、部下の皆さんが苦労しますからねっ」


このままでは、長くなりそうだと察した女は無理矢理に割り込む。
割り込みと、的確な痛い指摘のせいで、金髪の男は言葉を詰まらせた。


「昨日は、上の空で仕事が進まなかったでしょう? このままでは、皆さんの仕事に支障が出ます」

「うっ……」


終いには、バツが悪くなった男は俯いてしまった。


「…じゃあ、行ってくるね!」


項垂れる男を見て、チャンスだと思った女は扉に行き――扉を開けながら告げた。
男は、ハッとなり、女の名前を呼んだが……彼女は構わず扉を閉めて廊下へ――…。


「…さてさて、行きますか!」


何やら部屋から男の声がするが、女は気にしない。
自分の部屋へ行き、昨日まとめておいた荷物を持ち――屋敷の外へ。
玄関を出ると、高級そうな黒い車の傍で、鼻の下に黒髭が少しある中年の男が立っていた。
女は「ロマーリオ!」と呼びながら、傍へ駆け寄った。
呼ばれた男・ロマーリオは、クルッと振り向き――


「ボスに、ちゃんと挨拶できたか?」

「うん。でも、心配話が長くなりそうだったから、切ってきたわ」

「ははは! だろうと思ったぜ」

「えへへへ。じゃ! 空港まで、よろしく頼むわね!」

「あぁ、もちろんだ。車に乗れ」

「ありがとう!」



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