main
□それはどうすることもできない(日→滝)
1ページ/1ページ
俺の好きな人はずるい人だ。俺の気持ちを知っていながら知らないフリをする。残酷な人だ。でも美しくて優しくて、嫌いになんてなれない。
「日吉、最近頑張ってるね。エラいエラい。」
なんて俺の頭を撫でてくる。
「やめてください、滝さん。」
俺がそう言うのが精一杯だと知っていながら。俺の髪に触れる滝さんの手をふりほどけないと知っていながら。そして、滝さんにそう言ってもらうために頑張っているのだと知っていながら。
「ははっ。日吉、顔真っ赤だよ。可愛いんだね。」
そう言って誰よりも美しい笑顔を俺に向ける。その笑顔が俺だけのものならいいのに。誰にも見せたくない。俺のものだけにしたい。でも、そんなことを思っていることも滝さんはお見通しなんだろうな。だってもう、その笑顔を俺以外に見せているのだから。
「滝さん……」
俺は滝さんに触れられた髪を自分で触れながら、滝さんの温もりを感じる。もうそこには温もりなんてないのに。
俺の好きな人はずるい人だ。俺の気持ちを知っていながら、俺以外の人に愛想をふりまく。俺の心がこんなにも苦しくなることを知っていながら。
それでも俺は、滝さんを嫌いになんてなれない。だって滝さんは美しくて優しくて……そんな滝さんを俺は愛してしまったのだから。
END
2012.12.23
Dearミカヅキ、Happy Birthday