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□ささやかな反抗(跡日)
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いつかあの人に下剋上してやる。
そう思ってから今まで、その信念が揺らいだ事はない。今もすきがあったら下剋上してやるという気持ちでいっぱいだ。そう、憧れという感情が「好き」という感情に変わったとしても。それがお互いにだったと分かった今でも。
「おい!日吉!」
偉そうに俺を呼ぶ声がする。他の人にこんな呼び方されたらイライラするだけなのに、どうしてこの人だと胸がおどるのか、その事実にイライラする。
「なんですか、跡部さん。」
声のする方向を振り返ると男でも見とれてしまうような美しい姿の部長がいた。
「今日、部活が終わったら俺様の所に来い。一緒に帰るぞ。」
いつも命令口調のこの人は、自分をいったいなんだと思っているのか。
「なんでですか、俺は帰りますよ。」
本当は少し期待していた。一緒に帰れることを。でも、そんなことを思っていただなんて絶対に知られたくない。だからわざと思っていないことを告げる。
「あーん?お前に拒否権なんてねぇんだよ。本当は期待してたくせに。正直じゃねぇな。絶対俺様の所に来いよ。」
そう言い残し跡部さんは去っていった。
見抜かれてる。俺の心の全てを。嬉しくもあり、悔しくもある。この人に下剋上できるときはいつになるのか。
「俺は先に帰ります。」
誰にも聞こえないような声でささやかな反抗をするものの、結局はあの人のことを待っているんだろうな。
END
2012.12.23
Dearゐつちゃん Happy Birthday