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□笑いあえる幸せ(塚赤)
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「手塚さん!!会いに来たッス!」

そう言って部活帰りの俺を待っていたのは、立海大付属テニス部2年生の切原赤也だった。

「切原か。どうした、こんなとこまで来て。」

今日は特に何もないし、会う約束もしていない。わざわざこんなところまで来て、何かあったのか。

「えぇ!!ひどいッスよ!何もないですけど、手塚さんに会いたくて会いに来ちゃダメなんスか??」

と、俺の予想に反して、何かあったわけではないが、ただ俺に会いに来たのだと、切原はひどく悲しそうな表情で俺に訴えかけてくる。
切原とは三ヶ月くらい前からこうしてお互いに会いに行ったりする関係になった。たぶんこれが付き合うとかいうことなのだろう。
しかし、ここでそんなに大きな声で言われても困るのだが。

「そうか、すまなかった。では、一緒にどこかに寄るか。」

切原にそう提案すると、切原は顔いっぱいに笑顔を作り、

「そうするッス!どこ行きましょう!!あっ、俺、ハンバーガー食いたいッス!」

とさっきまでの表情が嘘みたいにかわっていった。自分の気持ちを素直に表情に出せる切原が少し羨ましく、俺が切原と一緒にいたい理由なのだな、と改めて思った。

「手塚さん!聞いてくださいよ!」

と、近くのハンバーガーショップに入り、席につくやいなや切原が俺に話しかけてきた。その表情は実にキラキラしていて、少し眩しいものに感じた。

「どうしたんだ?」

そう切原に問いかけると、

「今日、仁王先輩から英語教えてもらったッス!いきますよ!立海のグッドルッキングガイとは俺のことだ!」

と言って、とてもキラキラした表情で俺の反応を待っている。その時の切原が可愛くて、可笑しくて。柄にもなくつい笑ってしまった。

「なっ。なんなんすか!笑わないでくださいよ!……あんま笑ってると、お前、潰すよ?」

さっきまでのキラキラとした表情がみるみるうちに怒りの表情へと変化していく。
そうだった。切原は英語が苦手なのを気にしている。今笑ったということは、自分の話した英語に対して笑われたと思われても仕方がない。

「すまなかった。笑ってしまったのは謝ろう。」

と切原に対して謝ると、

「おっ、怒って悪かったッス。」

と切原は今度は少し落ち込んだ表情で俺に謝ってきた。

「いや、切原が謝ることはない。しかし、笑ってしまったのは、切原がその、可愛くて……だな、」

と切原を見習い少し自分の心を正直に伝えてみた。するとみるみるうちに切原の顔が真っ赤になる。

「そんなこと、手塚さんから言われるとは思わなかったッス。なんか嬉しいッスね。」

と切原は頭を恥ずかしそうに掻きながら照れている。
こんなにも表情がコロコロと変わる切原をみて、自然とまた笑えることができた。

こんな普通な幸せがずっと続いていけばいいと思った。

END

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