さがしもの。

□あおいかみ。
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広い校内に迷いながらも、サッカーグラウンドの近くまで辿り着いた。
僕は木の影に隠れるかのように身を屈み、潜める。
一応、部外者だから。

「おー、やってるやってる」

どの人達も大声をあげてやっている。
ボールを蹴って、パスを回して、シュートを打って、ゴールを守って……。
皆楽しそうにサッカーをやっていて、一瞬僕もやってみたいと思った。
……一瞬だけどね。
この容姿じゃ無理だし。
なんだか少し、自分が虚しく感じた。



黙々とグラウンドを見つめてると、ふと、あることを思いだした。

必殺技

炎が出てきたり、竜が出てきたりするとか。
前の学校でそんな事を聞いたなぁ、と思い返したのだ。

必殺技、見てみたいな……。
僕がそう考えていたその矢先だった。必殺技が見れたのは。

「疾風ダッシュ!」

そう叫んだ少年は、少年の前に立つ人々を風のように高速でかわした。

「……!」

僕は言葉にならなかった。
彼の必殺技は、僕が想像したものとは違う。
物体も何も出てこない。
でも、僕は凄い、格好良いと言う感情でいっぱいになった。


その後も、僕は練習を見る。
変わった所と言えば、
もう一度あの技見たいなぁ、と思って彼を見ることが多くなった。
それともう一つ、憧れることがあったんだ。

青い色の髪。

彼の髪の色は、僕の見上げた空よりもずっと濃い青で、それが綺麗だと感じた。
僕も、ああ成れたら良いのに……。
途端に嫌気がさした。
自分の容姿と、そんな考えをすることに。

僕は必死に嫌気を無くそうと、首を左右に揺さぶる。
そして嫌気の替わりに出てきたのは、

「僕、迷子だったんだ……」

少しの焦り。
生憎、時間が分からない。
でも、早く学校から出ないと、今日帰れないかもしれない。
そう思い、立ち上がる。
そして、青い髪の彼を横目に学校を出て行った。


あおいかみ。

(また練習、見にいきたいな)

(そういえば、家の方向ってどっちだっけ?)



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