さがしもの。

□てっとうで。
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雷門を出て、僕はまたさ迷い始める。
残念ながら、近くに案内板はない。
地図も持ってなければ、RPGゲームのように上画面に表示されない。
……まあ、当たり前か。

「ふう、疲れた……」

傍にある電柱に背中を向けて寄り掛かる。
にしても、どうしようかな……。
上を見上げると、大きな稲妻が象徴の鉄塔がある。
…………鉄塔?

「そっか!!」

バッと勢い良く電柱から離れ、鉄塔に向かって走りだした。

高い所から見下ろせば、僕の家が見つかるよ!

そんな考えを抱きながら。











「ハァ……ハァ……」

着いた場所は広場だった。
木にタイヤがぶら下がっているのは一体?
と疑問を抱きつつも、景色を眺める。

「わあぁぁ綺麗……!!」

眼下に広がるのは、夕日に染められた町一帯。
こんなに凄い所があったんだ……。
なんて、感嘆の声をあげていた。

「…………!?」

人の気配がしたため、振り返る。
昔から人が嫌いな性質なのか、こう言う時には敏感なのだ。
その気配の主は、私にとって意外な人だった。

「青い……髪……」

あの町同様、夕日に染められているけれど、その姿は紛れもなく、今日学校にいた青髪の彼だった。
僕は咄嗟にフードを深く被り直す。

「……どうも」

一回、僕は浅く礼をすると彼もどうも、と返事を返した。

「雷門生……にしては見ない顔だな。他校の人か?」

彼からそう質問された。
この場合、なんて答えれば良いのだろう?
取り敢えず僕は首を左右に振り、

「昨日引っ越して来た」

普段通り、単調に答えた。
しかしながら、こうやって人として扱ってくれたのは久しぶりな気がする。

「そっか。じゃあ此処について、何も分からないよな」
「そうだね。早速自分の家も分からないし」
「え、迷子なのか!?」

目を見開きながら訊いてくる彼に、私はあはは……と苦笑いをしながら頷く。

「それって大変な事じゃないのか!? 」
 

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