薄桜鬼BL

□あめのひ
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「…雨かよ」
オレは教室のつくえに突っ伏した。
今日は傘もカッパも持ってきていない。
「どーすっかなぁ…」
なんだか今日はついてない気がする。
一人で思案に暮れていると、
「平助くんっ」
と隣の千鶴が小さい声でオレをよんだ。
「ん?どうかし「藤堂っ!!」うわっ!」恐る恐る振り向くと、それはそれはこわぁい顔の……。
「…土方せんせ?」
「俺の授業の途中につくえに突っ伏してブツブツ独り言をいってくれるなんて、イイ度胸だな……?」
「…ごめんなさい!」
素直に謝ると、
「今度からは気をつけろよ…」
と授業に戻ろうとした。
そして戻り際に他の誰にも聞こえない声でいった。
「帰りのST終わったら準備室にこい」
その一言だけでオレの鼓動は一気に速くなった。



STが終わると、オレはダッシュで準備室に向かった。
たぶん現国の準備室だろう。
ただただ彼に…土方せんせいに会いたくて、走った。
前に『廊下を走るなっ』と土方せんせいに注意されたが、今はそんなこと構っていられない。
間もなく、準備室についた。
入る前に息を整える。
何度か深呼吸をして少し緊張しながら取っ手に手をかけた。
「失礼します」
「おう、はいれ」
土方せんせいの声がして入室する。
「…お前、走ってきただろ?」
「えっ!?」
バレないようにしたつもりだったのに。
「…本当に走ってきたのかよ」
「えっ!?」
どうやら墓穴を掘ってしまったようだ。
「……」
「あんだけ走んなっつったのに」
「……ごめんなさい……」
「…お前今日は謝ってばっかだぜ?気をつけろよ」
そういって土方せんせいはオレの頭を撫でた。
心音の数が一気に増える。
そして思わず頬が緩む。
「ちょっと待ってろよ?もうすぐおわるから」
「……?」
オレにはなんのことだかさっぱり分かんなかった。
「家の近くまで送ってってやる」
「!!」
「さっき雨がどうとかいってただろ?お前のことだから、傘も持ってきてないだろうし」
せんせいは全部わかってた。
わかってくれていた。
そう思うと、心の底からなんとも言えない感情がこみ上げてきた。
「―っ!…せんせい……」
「あ?」
「……オレん家じゃなくて、せんせいの家までのせてって?」
「……は?」
「オレ今日はずっとせんせいといたい」
「…お前なぁ……何されても文句いうなよ?」
「うん。」
何もしないなんてオレが許さない。

……前言撤回。
今日はめっちくちゃイイ日だ!
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