あたしの願いが叶うなら

□5話
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5-2

『話を戻すぞ』
「ん」
『お前の中の“神魂石”は順調に成長していた。
だけどアクシデントがあってな。
そのせいでお前は別の世界に渡ったんだ』
「アクシデント?
何かあったっけ?」
『忘れたのか?
お前が最期に望んだこと』
「望んだ?
そんなこと━━━」

━━━あった。
今、思い出した。

「どうして、あたし…」

忘れていたんだろう。
自分が殺されたこと。

『最期に望んだことを“神魂石”が叶えたんだろう。
宿主を生かすために。
だが、暴走する形で代償を払わなければならなくなったがな』
「暴走って…。
もしかして突然発作が起こったこと?」
『正解』

左の耳たぶが一瞬だけ燃え上がったように熱くなる。
驚きが強すぎて身体がギクリと硬直した。
熱さが消え、耳たぶを触って確認する。
何かぶら下がっているような…?

「なにこれ?
ねぇ、もしかしてあたしに何かした?」
『バッテリーのようなものだ。
暴走を防ぐためのものだから外すなよ』
「つけたの?!
やるなら先言ってよ!
耳たぶ熱すぎて寿命縮んだって!」

世界はあたしに何か恨みでもあるの?
容赦無いんだけど!

『別に恨みはない。
だが、お前の反応が面白くてな』
「この外道!」
『まぁ、前置きはこれぐらいにして』

あたしのペースに合わせることなく、世界は話題を変えてしまう。
なかなかの俺様だ。

『なぜ俺がお前をここに呼んだのか。
今からが本題だ』
「りょーかい」
『お前、虚とやり合った時に力を吸い取られなかったか?
その力が“神魂石”の欠片でな、それを手にした奴がいるんだ』
「それって誰?」
『物語を大きく動かした人物、浦原喜助だ』
「え?!
じゃあ、あの虚は浦原が!?」
『力を吸い取った虚を造り出した奴は別だ。
お前が黒幕だと睨んだ男だ』

BLEACHでの黒幕って言ったら藍染だよね?

『このまま回収せずに放置すれば、欠片が物語と同化してしまう』
「同化したらどうなるの?」
『本体はいつまでも欠けたままだ。
欠けた部分を、本体はお前の魂を削って補おうとする。
そして、周りの人間の魂や存在すらも吸収するだろう。
あるいは世界そのものを呑み込み、無に帰す。
最終的には俺にも分からない』
「周りの人間って…」

簡単に想像がついて背筋がゾッとした。

『そうならないために、俺はお前に回収を頼みたい。
俺はここから動けないからな』

目の前でまばゆい輝きが生じ、ゆっくりと集束していく。
輝きが消えれば、携帯が宙に浮いていた。

「これは?」
『欠片を追うための端末。
あと、何かあれば連絡するための通信機だ』

まるで持ってくれと言わんばかりに、携帯がひとりでに近づいてくる。
手の平を差し出せば、糸が切れたようにポトリと落ちた。

「行くよ。
あたしが動かなかったら大変なことになるのだけは分かるし」
『物分かりがよくて助かる。
まず一番に向かってほしいところがあるんだが』

上から目線な腹立つ言い方だけど、世界だから納得できた。

『欠片の影響を受けてしまった人物だ。
お前が動かなければ、その人物は物語に登場しないまま消滅する。
名を日番谷冬獅郎』
「ホントに?!」
『今からその場所に送る。
目を閉じろ』

言われるまま、まぶたを閉じる。

「あたしは何をすればいいの?」
『行けば分かる。
お前なら見抜けるはずだ』
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