あたしの願いが叶うなら

□14話
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14-1

水晶のペンダントは、喜助さんが渡してくれたあたしの唯一の持ち物だ。
首から外し、それを引き出しの奥へとしまう。
記憶が戻るキッカケを、あたしは自分から手放した。

「いってきます」















教室に到着し、自分の席に腰かける。
目の前の席の主はいない。
ルキアと一護はまだ来てないみたいだ。

「おはよう、春瀬さん」
「あ! おはよー雨竜」

席離れてるのにわざわざあいさつに来てくれるなんて。
雨竜は眼鏡を押し上げた。
クセなのかな?

「春瀬さん。
今日、弁当を持ってきてるかい?」
「ううん。
今日はパンを食べようと思って」

昼はテッサイさんが弁当を作ってくれることになっていたが、炊飯器が壊れたため、今回だけパンを買うことになっていた。
雨竜があたしの机に巾着袋を置いた。

「なにこれ?」
「実は今弁当を研究していて、他の人に味を確認してほしかったんだ。
食べてほしい」

すごい偶然に内心驚く。
今日はパンのつもりだったから、誰かの手作り弁当を食べれるなんて思わなかった。

「ありがとう雨竜!
すっごい嬉しい!!」

ワクワクしながら巾着袋を引き寄せる。

「今中身だけ見るのはダメだよね?」
「恥ずかしいんで昼になってからにしてください」

雨竜はまた眼鏡を押し上げた。
やっぱり、その仕草は無意識に出るクセなんだろうな。

「今日一緒に食べていい?」
「ああ。
もちろんだ」

本当になんとなくだけど、雨竜が嬉しそうに見えた。












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