あたしの願いが叶うなら
□16話
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「春瀬サーン。
朝っスよぉ」
休日の朝は喜助さんの声で始まった。
起きようと思うのに眠さがそれを上回っていて、まぶたは重いままだった。
「喜助さんあと5分…」
「春瀬サンこれで3回目じゃないっスか。
遊ぶ約束があるんじゃないんですか?
困った眠り姫っスねぇ」
大きなため息が聞こえたと思えば、喜助さんの気配が近づいた気がした。
「5秒数えます。
起きなかったらチューしますからね」
耳元で囁かれてゾワッと鳥肌が立った。
「はいカウントスタート。
いーちにーさーん…」
「起きます起きますっ!!」
飛び起きれば、喜助さんは不満そうに唇をとがらせていた。
「残念。
もっと寝てたらいいじゃないっスかぁー」
「なんでそこで残念がるんですか」
しかもカウント早かったし。
「アタシは戻りますね。
春瀬サン、二度寝しちゃあダメっすよ?」
「大丈夫です、さっきので眠気吹っ飛んだんで。
ありがとうございます。
すいません、なかなか起きなくて」
「いいっスよー」
ヒラヒラ手を振り、喜助さんは部屋を出ていった。
気配が遠くなってから、あたしはパジャマ代わりの甚平を脱いで私服に着替えた。
出かけるまで後3時間、か。
ハンガーにかけているエプロンを手に廊下へ出る。
洗面所を目指しつつ、ご飯を食べた後に出来る掃除を考えた。
トイレ、洗面所、台所に窓拭き、布団も干したいなぁ…。
寝起きのせいか、大きくて長いアクビが出た。