あたしの願いが叶うなら

□1話
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買ったばかりの最新刊には見知らぬキャラが描かれている。

「やっと出たよ〜」

新しいシリーズに入るらしいけど、どんな感じで物語が進むんだろう?
心の底から気になったのはBLEACHが初めてだ。
コミックス派だから、本屋が開店したと同時に購入した。
帰りに歩きながら読むのも生まれて初めてだった。
こんなにわくわくするなんていつ以来だろう?

最初のページを開こうとした時、ドン、と後ろから誰かがぶつかってきた。
意識が手元にいってたため、反応できずに転倒する。

「いった!!!」

誰だよ今ぶつかってきたの!!
すぐ確認すれば、帽子とマスクにグラサンの怪しい格好をした奴が立っていた。
手には包丁。
刃の部分には全部血が滴っていて、刺されたんだと自覚した。

そいつはすぐにあたしから離れ、あっという間に姿が見えなくなる。
助けを呼ぼうにも周りに人は見当たらないし、最悪なことに携帯も家に忘れてしまっていた。

早く人のいるところに出ないと…!

力が出なくて、歩きたくても立てなかった。
這いずるように進もうとするけど、遅れて痛みもやってくる。

「どうして━━━━」

あたしなんだろう?
どうして今なんだろう?
助けてくれる人も誰ひとりいなくて。

ねぇ、あたし、何か、した?











「せめて、最後ぐらい、続きを…」

見ようとしたけど、地面に落ちたBLEACHにすら手が届かなくて。

心臓がドクンと強く脈打ったのを最期に、あたしの意識は闇へと墜ちた。












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