あたしの願いが叶うなら

□7話
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7-1

「まさかキミに会えるとはね。
先程はすまない。
突然現れた得体の知れない霊圧だから警戒してしまったんだ」

浮竹の私室に案内され、一番に傷の手当てをしてくれた。
手際が良すぎて、あっという間に完了する。
魔法みたいだ。

「どうしてここに?
理由を話してくれ。
じゃないと不法入廷でキミを捕らえないといけなくなる。
キミを攻撃したくないんだ」

心からそう思ってるのか、懇願する眼差しは真剣だった。
迷うことなく、あたしは話すことを心に決めた。

「実はここに大事な人がいて」
「大事な人?」
「はい。
会いにきました」
「それは誰だい?」
「朽木ルキア、阿散井恋次、更木剣八、市丸ギン」

名前を言えば、浮竹はポカンとした。

「驚いた…。
キミ、彼らとどう出会ったんだい?」
「流魂街で。
一緒にいた時間は短くてほんのわずかだけど、家族だと思える人達です」

思い返せば、本当にわずかな時間だけど。
それでも一緒にいられた時間は、自分にとってすごく大きかった。

「その大事な人に会うためにキミはここに来たけど、正式な手続きをせずに瀞霊廷に入ることの意味は理解しているのかい?」
「分かってます。
今ここであなたに攻撃されて捕まっても文句言えないってことぐらいなら。
それでも、あたしにはこの方法しかなかった」

浮竹は黙り、困惑しているように長い溜め息をこぼした。

「それは緊急を要するか、キミに時間がないか、のどちらかだね?」

ズバリ言い当てた浮竹に、あたしは肯定の意味で一度頷く。

「あと1時間で記憶が無くなるんです。
今まで伝えたかったこととさよならを言いに来ました」
「どうして1時間だと?」
「あたしの中に大きな力があって、暴走しないために記憶を無くさないといけなくて。
1時間はあたしが別れを伝えるために許された時間です」

そう、たった1時間だ。
こうやって話しているけど、残り時間は今も減っている。
姿勢を正し、浮竹へと頭を下げた。

「お願いします。
1時間だけ、あたしを見逃してください」

沈黙。
答えがすぐ出ないのは仕方ない。
だって無断で侵入してきた人間の言葉だ。
静まり返った室内に、ふすまの開く音が聞こえた。

「時間が無いなら急がないとね」

落ち着きのある渋さを帯びた声に顔を上げる。
一度対面した時と少しも変わらない京楽がそこにいた。

「どうしてここに?!」
「ちょっと近くを通りかかってね。
話は聞かせてもらったよ」

ゆったりとした足取りで中に入った京楽は、目線を合わせるようにあたしのそばでしゃがんだ。

「あの時以来だね。
結局鬼ごっこはおじさんの負けだけど」
「お久しぶりです。
あの時は逃げてすみませんでした」

苦笑し、京楽は立ち上がる。

「山じいに怒られそうだけど、俺はこの子の力になってやりたい」
「やっぱりおまえもか。
俺と京楽、あともう一人の許可は後でもらうことにして」

いつの間にか答えが出たのか、2人は笑顔であたしを見た。

「協力しよう」
「あと時間はどれだけ残っている?」

見逃してもらえたら、と思っていたのにそこまで言ってもらえるなんて。
喜びよりも戸惑いのほうが強かった。

「いいんですか?
だってあたし手続きしないで入ったのに…」
「入廷は隊長の許可があればいいんだよ。
さ、早く行こう」

浮竹も腰を上げ、座っているのはあたし一人だった。

なんて優しい人達だろう。
目頭が熱くなり、自然と頭が下がっていた。

「ありがとうございます…!」












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