あたしの願いが叶うなら

□10話
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「見つけた…?」

何を?
聞こうとした時、複数の気配が近づいてきた。

「春瀬さん、大丈夫っスか?」

声が聞こえたほうに顔を向ければ、喜助さんとテッサイさんが立っていた。
支えられたままだということを思いだし、男の人をやんわりと押して一人で立つ。
喜助さんは男の人とあたしを交互に見た。

「そちら、お知り合いの方ですか?」
「いえ。
あの…あたしのこと助けてくれたんです」

改めて男の人を見れば、戸惑いの表情であたしを凝視していた。

「ありがとうございます。
もしかして石田さんですか?」

男の人はぎこちなく頷いた。

「財布落とした人ですよね」
「はい。
電話をもらって取りにきました」

石田さんは喜助さんを一瞥し、またあたしへと向き直る。

「初めまして。
僕の名前は石田雨竜です。
そちらの方はご家族の人ですよね?」
「えぇ。
アタシは浦原喜助といいます」

“家族”
喜助さんの表現に、嬉しさで胸が熱くなる。

「僕の財布、彼女が届けてくれたんです。
本当にありがとうございました。
あの、体調がすぐれないみたいなので休ませたほうがいいと思います」
「それはわざわざすみませんねぇ。
こちらこそ、ありがとうございました」

喜助さんは、戻ることを促すようにあたしを見た。

「大丈夫っスか?
今日は一度戻りましょう」
「はい」

強い視線を感じ、もしやと思って石田さんを見る。
やっぱりこっちを凝視していた。
どうしてだろう?
すごい辛そうに見えた。

「あの」

考えるよりも先に声をかけていた。

「次、会ったらゆっくり話しましょう」

辛そうな石田さんは、やっと笑顔を見せてくれた。

「はい。
またいつか」











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