あたしの願いが叶うなら
□11話
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目が覚めた時、喜助さんはまだ手を握ってくれた。
座った姿勢のまま、目を閉じてうつむいている。
長時間ずっとこのままでいたんだ。
申し訳なく思って、喜助さんの手から自分の手を抜いた。
「あれ? 春瀬サンもういいんスか?」
わ! 起きてた!
「お、おはようございます喜助さん。
昨日はありがとうございました。
ごめんなさい。
ずっと手、握ってくれて…」
「いいっスよぉ。
春瀬サンの寝顔が拝めたんで」
この人恥ずかしくなることを平気で言うな。
喜助さんは肩をコキコキ鳴らしながら立ち上がった。
「それじゃあアタシは戻りますね」
「はい。
ありがとうございます」
部屋を出ようとする喜助さんはフラフラとした足取りだった。
やっぱり寝てないからだよね。
心配になり、後を追いかければ案の定。
グラリとふらつき、あたしは慌てて喜助さんを後ろから支えた。
「大丈夫ですかっ?!」
肩を貸そうと喜助さんの隣に行けば、なぜかギュッと抱き締められた。
「大丈夫じゃないっスよぉ。
アタシの部屋行きません?
今度は春瀬サンがアタシと一緒に寝フグォッ」
「大丈夫だったらひとりで行ってください」
喜助さんを廊下へドンと突き飛ばし、ふすまをピシャッと閉めた。
どうして喜助さんっていつもあぁなんだろう。
「はー……」
ドッと疲れ、出てくるのは長いため息だった。