あたしの願いが叶うなら

□11話
2ページ/7ページ

11-1

目が覚めた時、喜助さんはまだ手を握ってくれた。
座った姿勢のまま、目を閉じてうつむいている。
長時間ずっとこのままでいたんだ。
申し訳なく思って、喜助さんの手から自分の手を抜いた。

「あれ? 春瀬サンもういいんスか?」

わ! 起きてた!

「お、おはようございます喜助さん。
昨日はありがとうございました。
ごめんなさい。
ずっと手、握ってくれて…」
「いいっスよぉ。
春瀬サンの寝顔が拝めたんで」

この人恥ずかしくなることを平気で言うな。
喜助さんは肩をコキコキ鳴らしながら立ち上がった。

「それじゃあアタシは戻りますね」
「はい。
ありがとうございます」

部屋を出ようとする喜助さんはフラフラとした足取りだった。
やっぱり寝てないからだよね。
心配になり、後を追いかければ案の定。
グラリとふらつき、あたしは慌てて喜助さんを後ろから支えた。

「大丈夫ですかっ?!」

肩を貸そうと喜助さんの隣に行けば、なぜかギュッと抱き締められた。

「大丈夫じゃないっスよぉ。
アタシの部屋行きません?
今度は春瀬サンがアタシと一緒に寝フグォッ
「大丈夫だったらひとりで行ってください」

喜助さんを廊下へドンと突き飛ばし、ふすまをピシャッと閉めた。
どうして喜助さんっていつもあぁなんだろう。

「はー……」

ドッと疲れ、出てくるのは長いため息だった。











次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ